文字サイズ:

木の構成成分

植物は光合成によって、無機物から有機物を作り出します。

葉の気孔からCo2を取り入れ、根から水を吸い上げ、葉緑素の働きと太陽の光エネルギーを利用して、ブドウ糖を作り酸素を放出します。
光合成
さらに、このブドウ糖を基にして、二次的に様々な成分を作り出します。
当然、これらの成分は樹木の生命を維持するために重要な働きをします。
画像の説明

主要成分

樹体を形成するための成分としてセルロース、ヘミセルロース、リグニンがあります。

セルロース
セルロースは、木材のみならず、草本、種毛など広く高等植物の構成成分で、地球上に最も多量に存在する天然有機化合物でもあります。主に細胞の二次壁部分(細胞壁の主要部分)に存在し、樹木を支える役割を果たしています。
リグニンは、特に細胞間に高濃度で存在し、細胞壁と細胞壁をくっつける役割を果たしています。

ヘミセルロース
植物細胞を構成する多糖のうち、セルロースとペクチン系多糖を除いたものをヘミセルロースといい、セルロースと同様に、主に二次壁部分に存在します。
複数の単糖からなる複合多糖であり、その構造は針葉樹、広葉樹についてそれぞれ特徴的なものとなっています。

リグニン
リグニンはシダ類以上の高等植物に特徴的に存在する芳香族高分子化合物で、細胞壁内および細胞壁間に沈殿し、細胞同士を癒着しています。
これによって木材の組織は化学的にも物理的にも強固になります。
また水分通導組織においては、疎水性をもつリグニンの沈殿によって、水漏れを防止し根から樹木の末端までの水分の運搬を完全なものにしています。
 形成層において生まれたばかりの細胞の壁は極めて薄く、主としてペクチン質やキシログルカンによって構成されており、この段階の細胞壁にはリグニンは含まれていません。ついで細胞壁にセルロース、ヘミセルロースが沈殿し、二次壁外層が形成される段階になり、セルコーナー部、中間層、一次壁の順にリグニンの沈殿が進み、最後に二次壁への沈殿によって木化が完了します。
木が堅いのはリグニンが含まれているためで、紙はリグニンを除去して作ります。

コンクリート構造

 木の幹はよくコンクリートの建物に例えられます。
セルロースは鉄筋のような役割をして縦方向を維持し、ヘミセルロースは鉄筋と鉄筋を繋ぐ針金のような働きをしています。リグニンはコンクリートのようにセルロース、ヘミセルロースをしっかりと固めています。

抽出成分

抽出成分とは細胞壁中に存在する低分子物質で、セルロース、ヘミセルロース、リグニンとは異なり、細胞壁の基本構造を構成するものではありません。
抽出成分はその名前のとおり、水あるいは有機溶剤によって抽出可能であり、なかには植物の種類に特徴的で、指標となる成分もあります。
抽出成分は木材の色調、香り、耐候性、耐朽性、耐蟻性などと密接に関係しています。
樹木の生理作用に関係しているものとして、1930年頃、旧ソ連のB.P.トーキン博士は、この植物の不思議な力を発見し、フィトン(植物が)チッド(殺す)と名づけました。
抽出成分

芳香族抽出成分

 これにはきわめて多様な物質が含まれますが、それらを大別すると、フェノール類、スチルベン類、クマリン類、フラボノイド類、タンニン類、トロポロン類およびリグナン類があります。
 これらの芳香族抽出成分の生合成経路としては、シキミ酸経路により生成したシキミ酸からプリフェン酸、ケイ皮誘導体を経てフラボノイド類、スチルベン類、リグナン類がリグニンとともに生成されます。
また、シキミ酸からは別に没食子酸を経て加水分解型タンニンが生成されると考えられます。カメノール、カルバクロールやビフェニル核を有するアウクバリン、リグニンの前駆体と考えられているコニフェリンやシリンジン、あるいはp-ヒドロキシクマリルアルコールの配糖体、リグニンとの関連が予想されるバニリン酸、シリンガ酸、フェルラ酸等が見出されています。
 スチルベン類のなかでとくにピノシルビンは松材に特徴的な物質で亜硫酸蒸解における阻害物質として知られています。

フラボノイド

フラボノイド類とはC6-C3-C6の骨格を持つ化合物の総称で、フラボン、フラバノン、カルコン、オーロン、イソフラボン、カテキン、ロイコアントシアニジンなどが含まれています。
フラボンは2-フェニルクロモン骨格をもつ化合物であり、フラバノンは、その2,3-ジヒドロ体であるが、これらは植物界に広く分布しています。

タンニン

タンニンは構造的にまったく異なる二種類の物質の総称で、その特徴としてはタンパク質、アルカロイド、石灰などと不溶性の沈殿を生じ、皮革のなめし作用を持っています。
加水分解型タンニンは酸、アルカリなどによる加水分解によって単純なフラグメントに分解されるもので、ガロタンニンでは没食子酸のみが得られるのに対し、エラグタンニンではエラグ酸が得られます。その構造はグルコースなどを核として、これに没食子酸などのフェノールカルボン酸がエステル結合しています。
 ウルシ科の葉やカシの五倍子に含まれる五倍子タンニンは良く知られています。一方縮合型タンニンはカテキン類やロイコアントシアニジン類を前駆物質とする無定形高分子物質であって、アカシア属の材やスギねアカマツなどの樹皮中に多量に含まれます。
最近、タンニンの生理活性について関心を持たれていますが、加水分解型タンニンから生成するエラグ酸には鎮静作用、抗腫瘍性が知られています。

リグナン

リグナンはレジノールともよばれ、リグニンの構成単位と同じフェニルプロパン単位が、その側鎖β位間で炭素-炭素結合したジアリルブタン誘導体です。
このように構造的にはリグニンの縮合型構造と類似のものですが、分子内に不斉炭素をもち、リグニンとは異なり光学的に活性です。
ノルリグナンの一種であるが、ヒドロキシスギレジノールとヒノキレジノールは、それぞれスギ材の黒変現象、ヒノキ材の赤化現象の原因物質と考えられています。

テルペン類

テルペンはイソプレン単位(C5H8)が二個以上、鎖状または環状に結合した一連の化合物の総称で、イソプレノイド単位2,3,4,6個からなるテルペンをそれぞれモノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、トリテルペン(C30)といいます。
 テルペンは樹木の心材、辺材、根、枝、葉、樹皮のあらゆる部位に分布しており、またその他の草本類にもひろく認められます。樹木におけるテルペン類の存在量は、針葉樹が広葉樹よりも多いというのが一般的です。
 モノテルペンは低分子フェノール類とともに、「香り」の主体をなす成分です。松属に多量に存在するα-ピネン、オレンジ油の主成分であるリモネン、クスノキの製油の主成分である樟脳、タイワンヒノキの葉の精油せいぶんのα-ツエン、ある種のフタバガキ科の精油成分であるボルネオールなどきわめて多様な化合物の存在が知られています。

a:20035 t:6 y:16